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 『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

 間の悪さは、馬蛤貝《まてがい》のちょうど隠家《かくれが》。――塩を入れると飛上るんですってねと、娘の目が、穴の上へ、ふたになって、熟《じっ》と覗《のぞ》く。河童だい、あかんべい、とやった処が、でしゅ……覗いた瞳のしさ、その麗《うららか》さは、月宮殿の池ほどござり、睫《まつげ》が柳の小波《さざなみ》に、岸を縫って、靡《なび》くでしゅが。――ただ一雫《ひとしずく》の露となって、逆《さかさ》に落ちて吸わりょうと、蕩然《とろり》とすると、痛い、疼《いた》い、痛い、疼いッ。肩のつけもとを棒切《ぼうぎれ》で、砂越しに突挫《つきくじ》いた。」

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