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 『五大力』 従吾所好

「やゝ、又、立所に雲の絶間を、はあ、冴えたる月かな。それ/\俤が波に映るわ、御覧ぜい。山田矢瀬〈やばせ〉の渡し船の、夜は通ふ人なくとも、月のさそはば自から、船もこがれて出づらん――」
 と背後からおはれかゝる体に、扇子を上げて、熟と舞台を差窺ふ。
 霞も連れて凝視めたのである。

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