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 『歌行燈』 従吾所好

 其れだ、と門口で断られう、と亭主は其の段含ませたさうな気の可い顔色〈かほつき〉。
「御串戯もんですぜ、泊りは木賃と極つて居まさ。茣蓙と笠と草鞋が留守居。壁の破れた処から、鼠が首を長くして、私の帰るのを待つて居る。四五日は此の桑名へ御厄介に成らうと思ふ。……上旅篭の湊屋で泊めてくれさうな御人品なら、御当家へ、一夜の御無心申したいね、どんなもんです、女房さん。」

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