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 『日本橋』 青空文庫

「座敷へ入ると間も無くさ、びりびり硝子戸なんざ叩破りそうな勢、がらん、どん、どたどたと豪い騒ぎで、芸者交りに四五人の同勢が、鼻唄やら、高笑。喚くのが混多になってね。上り込むと、これが狭い廊下を一つ置いた隣座敷へ陣取って、危いわ、と女の声。どたんと襖に打つかる音。どしん、と寝転ぶ音。――楠の正成がーと梅ヶ|枝の手水鉢で唄い出す。
 座敷を取替えて上げよう、こっちは一人だから。……第一寄進に着いた電燈に対してもお鹿の女房が辞退するのを、遠慮は要らない、で直ぐに、あの、前刻のあれ、雛の栄螺と蛤の新聞包みを振下げて出た。が、入交るのに、隣の客とが合うから、私は裏梯子を下りて、鉢前へちょっと立った。……

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