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『日本橋』 青空文庫
前後七年ばかりの間、内端に打解けたような、そんな風采をしていたのは初めてかと思う。もっともちょっとひく感冒と、眩暈は持病で、都合に因れば仮託でね――以前、私の朋達が一人、これは馴染が有って、別なある待合へ行った頃――ちょいちょい誘われて出掛けた時分には、のべつに感冒と眩暈で、いくら待っても通って見ても、一度も逢えた事は無かったんだ。もう断念めていた処、その後宴会があって、あるお茶屋へ行くと、その時、しばらく振で顔を見た。何だか、打絶えていた親類に思掛けず出逢ったような可懐い気がしたっけ。それが縁で、……時々、と云っても月に二三度、そのお茶屋で呼ぶとね、三度に二度は来てくれる。
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