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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 然も今度のは半分に引切つてある胴から尾ばかりの虫ぢや、切口が蒼みを帯びて其で恁う黄色な汁が流れてぴく/\と動いたわ。
 我を忘れてばら/\とあとへ遁帰つたが、気が付けば例のが未だ居るであらう、譬ひ殺されるまでも二度とは彼を跨ぐ気はせぬ。あゝ先刻のお百姓がものの間違でも故道にはが恁うといつてくれたら、地獄へ落ちても来なかつたにと照りつけられて、涙が流れた、南無阿弥陀仏、今でも悚然とする。」と額に手を。

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