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 『婦系図』 青空文庫

 先生がその肩の聳えた、懐手のまま、片手で不精らしくとんとんと枝折戸《しおりど》を叩くと、ばたばたと跫音聞えて、縁の雨戸が細目に開いた。
 と派手な友染の模様が透いて、真円《まんまる》なを出したが、燈《あかり》なしでも、その切下げた前髪の下の、くるッとした目は届く。隔ては一重で、つい目の前《さき》の、丁子巴の紋を見ると、莞爾々々《にこにこ》と笑いかけて、黙って引込《ひっこ》むと、またばたばたばた。

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