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『草迷宮』
鏡花とアンティークと古書の小径
この姿は、葎を分けて忍び寄ったはじめから、目前《めさき》に朦朧と
映
ったのであったが、立って丈長き葉に添うようでもあり、寝て根を潜るようでもあるし、浮き上って葉尖《はさき》を渡るようでもあった。で、大方仁右衛門自分の身体《からだ》と、竹槍との組合せで、月明《つきあかり》には、そんな影が出来たのだろう、と怪しまなかったが、その姿が、不図《ふと》屋根の上に移ったので。
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