検索結果詳細


 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 この姿は、葎を分けて忍び寄ったはじめから、目前《めさき》に朦朧とったのであったが、立って丈長き葉に添うようでもあり、寝て根を潜るようでもあるし、浮き上って葉尖《はさき》を渡るようでもあった。で、大方仁右衛門自分の身体《からだ》と、竹槍との組合せで、月明《つきあかり》には、そんな影が出来たのだろう、と怪しまなかったが、その姿が、不図《ふと》屋根の上に移ったので。

 1191/1510 1192/1510 1193/1510


  [Index]