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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 その細腰を此方へ、背を斜にした裾が、脛のあたりへ瓦を敷いて、細くしなやかに掻込んで、蹴出したような褄先が、中空なれば遮るものなく、便《たより》なさそうに、しかも軽く、軒の蜘蛛の囲《い》の大きなのに、はらりと乗って、車《みずぐるま》に霧が懸った風情に見える。背筋の靡く、頸許《くびもと》のほの白さは、月に預けて際立たぬ。その月影は朧ながら、濃い黒髪は緑を束ねて、森の影が雲かと落ちて、その俤をうらから包んだ、向うむきの、やや中空を仰いだ状《さま》で、二の腕の腹を此方へ、雪の如く白く見せて、静《しずか》に鬢の毛を撫でていた。

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