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 『化鳥』 青空文庫

さつき私《わたし》がいつた、猿に出処《しゆつしよ》があるといふのはこのことで。
まだ私《わたし》が様《おつかさん》のお腹に居た時分だツて、さういひましたつけ。
初卯《はつう》の日、母様《おつかさん》が腰元《こしもと》を二人連れて、市の卯辰《うたつ》の方の天神様《てんじんさま》へお参《まゐ》ンなすつて、晩方《ばんがた》帰つて居らつしやつた、ちやうど川向《かはむか》ふの、いま猿の居る処で、堤坊《どて》の上のあの柳の切株に腰をかけて猿のひかへ綱《づな》を握《にぎ》つたなり、俯向《うつむ》いて、小さくなつて、肩で呼吸《いき》をして居たのが其猿廻《さるまはし》のぢいさんであつた。

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