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 『義血侠血』 青空文庫

「おっと、そうは言わせない。なるほど私たちにはしなかったが、この姉さんにはどうだい。六十六銭五厘のうち、一人で五十銭の酒手をお出しなすったのはこのかただよ。あの腕車より迅く行ってもらおうと思やこそ、こうして莫大な酒手も奮《はず》もうというのだ。どうだ、先生、恐れ入ったか」
 鼻蠢かして世話人は御者の背《そびら》を指もて撞きぬ。渠は一言を発せず、世話人はすこぶる得意なりき。人は戯るるがごとくに詰《なじ》れり。
「馬丁さん、ほんとに約束だよ、どうしたってんだね」

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