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『日本橋』 青空文庫
「そうだ――ああお銚子が冷めました、とこう、清葉が、片手で持って、褄の深い、すんなりとした膝を斜っかいに火鉢に寄せて、暖めるのに炭火に翳す、と節の長い紅宝王を嵌めたその美しい白い手が一つ。親か、姉か、見えない空から、手だけで圧えて、毒な酒はお飲みでない、と親身に言ってくれるように、トその片手だけ熟と見たんだ。……」
お孝が、ふと無意識の裡に、一種の暗示を与えられたように、掌を反らしながら片手の指を顋に隠した。その指には、白金の小蛇の目に、小さな黒金剛石を象嵌したのが、影の白魚のごとく絡っていたのである。
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