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 『日本橋』 青空文庫

 お孝が、ふと無意識の裡に、一種の暗示を与えられたように、掌を反らしながら片手の指を顋に隠した。その指には、白金の小蛇の目に、小さな黒金剛石を象嵌したのが、影の白魚のごとく絡っていたのである。
 後で知れた、――衣類の紋も、同じ色の小蛇の巻いた渦巻であった。
「時に、隣の間の正成も、ふと音の消えた時、違棚の上で、チャチャ、と囁くように啼いたものがある。声のしたのは、蛤です。動いたと見えて、ガサガサと新聞包が揺れたろうではないか。」

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