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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 かくて、手を取って引立てられた――宰八が見た飛石は、魅せられた仁右衛門の幻の目に、即ち御新姐の胸であったのである、足もまだ粘々《ねばねば》する、手はこの通り血だらけじゃ、と戦いたが、行燈に透かすと夜露に曝《さ》れて白けていた。

 「我《が》折れ何とも、六十の親仁が天窓《あたま》を下げる。宰八、夜深《よふか》じゃが本宅まで送ってくれ。片時もこの居まわり三町の間におりたくない、生命《いのち》ばかりはお助けじゃ。」

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