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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 寝苦しいか、白やかな胸を出して、鳩尾へ踏落しているのを、痩せた胸に障らないように、密《そ》っと引掛けたが何にも知らず、先ず可かった。――仁右衛門が見た御新姐のように、この手が触って血を吐きながら、莞爾としたらどうしよう。
 そう思うと寝苦しい、何にも見まい、と目を塞ぐ、と塞ぐ後から、睫がぱちぱちと音がしそうに開いてしまうのは、心が冴えて寝られぬのである。
 掻巻を引被《ひっかぶ》れば、衾の袖から襟かけて、大《おおき》な洞穴のように覚えて、足を曳いて、何やらずるずると引入れそうで不安に堪えぬ。

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