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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 何しろ路傍の草いきれが可恐しい、大鳥の卵見たやうなものなんぞ足許にごろごろして居る茂り塩梅。
 又二里ばかり大蛇の蜿るやうな坂を、山懐に突当つて岩角を曲つて、木の根を繞つて参つたが此処のことで余りの道ぢやつたから、参謀本部の絵図面を開いて見ました。
 何矢張道は同一で聞いたにも見たのにも変はない、旧道は此方に相違はないから心遣りにも何にもならず、固より歴とした図面というて、描いてある道は唯栗の毬の上へ赤い筋が引張つてあるばかり。

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