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 『日本橋』 青空文庫

 人通りは全然無し、大川端の吹雪の中を通魔のように駆けて通る郵便配達が、たった一人。……それが立停まって、チョッ可哀相にと云った。……声を出して泣きながら、声も涸れて、やっと薬研堀の裏長屋の姉の内の台所口へ着いた、と思うと感覚が無い。
 浸々と降る雪の中に、ただどしんと云う音がしたって、姉が後で言い言いした。
 ところがどうです……妹は妹で、その前夜から奉公先を病気で下って、内で寝ている。

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