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 『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

 その手が糸を曳いて、針をあやつったのである。
 縫えると、帯をしめると、私は胸を折るようにして、前のめりに木戸口へ駈出した。挨拶は済ましたが、咄嗟《とっさ》のその早さに、でっぷり漢《もの》と女は、衣《きもの》を引掛ける間もなかったろう……あの裸体《はだか》のまま、井戸の前を、青すすきに、く摺れて、人の姿の怪しい蝶に似て、すっと出た。

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