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『日本橋』 青空文庫
重代の雛は、掛物より良い値がついて、疾に売った。有合わせたのは土彩色の一もん雛です。中にね、――潰島田に水色の手柄を掛けた――年数が経って、簪も抜けたり、その鬢の毛も凄いような、白い顔に解れたが――一重桜の枝を持って、袖で抱くようにした京人形、私たち妹も、物心覚えてから、姉に肖ている、姉さんだ姉さんだと云い云いしたのが、寂しくその蜜柑箱に立っていた。
それをね、姿見を見る形に、姉が顔を合せると、そこへ雪明りが映して蒼くなるように思ったよ。姉が熟と視めていたが、何と思ったか、栄螺と蛤を旧へ直すと、入かわりに壇へ飾ったその人形を取って、俎の上へ乗せたっけ……」
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