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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

「ぢや青大将の方が増だつたんだ。だのに、態々呼留めて、災難を免れたとまで事を誇大にして、礼なんぞおつしやつて、元来、私は余計なお世話だと思つて、御婦人ばかりの御住居だと聞いたにつけても、愈々極が悪くつて、此処だつて、貴女、こそ/\遁げて通らうとしたんぢやありませんか。それを大袈裟に礼を言つて、極を悪がらせた上に、姿とは何事です。幽霊ぢやあるまいし、心持を悪くする姿と云ふがありますか。図体とか、状とか云ふものですよ。其の私の図体を見て、心持が悪くなつたは些と烈しい。それがために寝たは、残酷ぢやありませんか。

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