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 『春昼』 泉鏡花を読む

 出家は頷くやうにして、机の前に座を斜めに整然と坐り、
「然やうでございます。御繁昌と申したいでありますが、当節は余りござりません。以前は、荘厳麗結構なものでありましたさうで。
 貴下、今お通りになりましてございませう。此処からも見えます。此の山の裾へかけまして、づツとあの菜種畠の辺、七堂伽藍建連なつて居りましたさうで。書物にも見えますが、三浦郡の久能谷では、此の岩殿寺が、土地の草分と申しまする。

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