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 『夜行巡査』 青空文庫

「うんや、驚くこたあない、また疑うにも及ばない。それを、そのおさんを、おまえのお父《とっ》さんに奪られたのだ。な、解ったか。もちろんおまえのおさんは、おれがなんだということも知らず、弟《おとと》もやっぱり知らない。おれもまた、口へ出したことはないが、心では、心では、実におりゃもう、お香、おまえはその思い遣りがあるだろう。巡査というものを知ってるから。婚礼の席に連なったときや、明け暮れそのなかのいいのを見ていたおれは、ええ、これ、どんな気がしたとおまえは思う」

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