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『龍潭譚』 青空文庫
背に手をかけ引寄せて、玉の如きその乳房をふくませたまひぬ。露《あらわ》に白き襟、肩のあたり鬢のおくれ毛はらはらとぞみだれたる、かかるさまは、わが姉上とは太《いた》く違へり。乳をのまむといふを姉上は許したまはず。
ふところをかいさぐれば常に叱りたまふなり。母上みまかりたまひてよりこのかた三年《みとせ》を経つ。乳《ち》の味は忘れざりしかど、いまふくめられたるはそれには似ざりき。垂玉《すいぎよく》の乳房ただ淡雪の如く含むと舌にきえて触るるものなく、すずしき唾のみぞあふれいでたる。
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