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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 と数える内に、拾い上げた膝の上は、早や隙間なく落葉に埋もるる。
 空を仰ぐと、天井は底がなく、暗夜《やみ》の深山にある心地。
 おお、この森を峠にして、こんな晩、中空を越す通魔《とおりま》が、魔王に、礑《はた》と捧ぐる、関所の通証券《とおりてがた》であろうも知れぬ。膝を払って衝《つ》と立って、木の葉のはらはらと揺れるに連れて、ぶるぶると渠は身震いした。

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