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 『婦系図』 青空文庫

 瓜核顔《うりざねがお》の、鼻の準縄《じんじょう》な、目の柔和《やさし》い、心ばかり面窶《おもやつれ》がして、黒髪の多いのも、世帯を知ったようで奥床しい。眉のやや濃い、生際《はえぎわ》の可い、洗い髪を引詰《ひッつ》めた総髪《そうがみ》の銀杏返しに、すっきりと櫛の歯が通って、柳に雨の艶の涼しさ。撫肩の衣紋つき、少し高目なお太鼓の帯の後姿が、あたかも姿見に映ったれば、のように透通る細長い月の中から抜出したようで気高いくらい。成程この婦《おんな》の母親なら、芸者家の阿婆《おっかあ》でも、早寝をしよう、と頷かれる。

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