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『高野聖』 泉鏡花を読む
此の汽車は新橋を昨夜九時半に発つて、今夕敦賀に入らうといふ、名古屋では正午だつたから、飯に一折の鮨を買つた。旅僧も私と同じく其の鮨を求めたのであるが、蓋を開けると、ばら/\と海苔が懸つた、五目飯の下等なので。
「やあ、人参と干瓢ばかりだ。」と粗忽ツかしく絶叫した。私の顔を見て旅僧は耐え兼ねたものと見える、吃々と笑ひ出した、固より二人ばかりなり、知己にはそれから成つたのだが、聞けば之から越前へ行つて、派は違ふが永平寺に訪ねるものがある。但し敦賀に一泊とのこと。
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