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『絵本の春』
青空文庫
気勢《けはい》はしつつ、……橋を渡る音も、隔《へだた》って、聞こえはしない。……
桃も桜も、真紅《まっか》な椿も、濃い霞に包まれた、朧《おぼろ》も暗いほどの土塀の一処《ひとところ》に、石垣を攀上《よじのぼ》るかと附着《くッつ》いて、……つつじ、藤にはまだ早い、――荒庭の中を覗《のぞ》いている――絣《かすり》の筒袖を着た、頭の円い小柄な小僧の十余りなのがぽつんと見える。
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