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 『日本橋』 青空文庫

「怜悧だな。何、天晴御会釈。いかさま、御姓名を承りますに、こなたから先へ氏素姓を申上げぬという作法はありませなんだ。しかし御覧の通り、木の端同然のものでありますので、別に名告りますほどの苗字とてもありませぬ。愚僧は泉岳寺の味噌摺坊主でござる。」
 事実元禄義士扱い。で、言葉も時代に、鄭重に、生真面目な応対。小児等は気を取られて、この味噌摺坊主に、笑うことも忘れて浮りでいる。
「ええ、さて各自には、すでに御本望をお遂げなされたのでありまするか。それとも、また今夜にも吉良邸へお討入りに相成りますかな。」

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