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『歌行燈』
従吾所好
と兄哥は照れた風で腕組みした。
「私がお世辞を言ふものですかな、真実〈まつたく〉ですえ。あの、其の、なあ、悚然〈ぞつ〉とするやうな、恍惚〈うつとり〉するやうな、緊めたやうな、投げたやうな、緩めたやうな、まあ、何と言うて可からうやら。海の中に柳があつたら、お月様の影の中へ、身を投げて
死
にたいやうな、……何とも言ひやうのない心持に成つたのですえ。」
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