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 『海神別荘』 華・成田屋

博士  確(たしか)に。(書を披く)手近に浄瑠璃にありました。ああ、これにあります。・・・若様、これは大日本浪華(なにわ)の町人、大経師以春(だいきょうじいしゅん)の年若き女房、名だたる美女のおさん。手代茂右衛門と不義顕れ、すなわち引廻し磔になりまする処を、記したのでありまして。
公子  お読み。
博士  (朗読す)――紅蓮の井戸堀、焦熱の、地獄のかま塗(ぬり)よしなやと、急がぬ道をいつのまに、越ゆる我身の死出の山、死出の田長(たおさ)の田がりよし、野辺より先を見渡せば、過ぎし冬至の冬枯の、木の間木の間にちらちらと、ぬき身の槍や恐しや、――

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