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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 葉山森戸などへ三崎の方から帰ります、この辺のお百姓や、漁師たち、顔を知ったものが、途中から、乗《のっ》けてくらっせえ、明《あ》いてる船じゃ、と渡場《わたしば》でも船つきでもござりませぬ。海岸の岩の上や、磯の松の樹の根方から、おおいおおい、と坂東声《ばんどうごえ》で呼ばり立って、とうとう五人が処《とこ》押込みましたは、以上七人になりました、よの。
 どれもどれも、碌でなしが、得手に帆じゃ。船は走る、口は辷る、凪はよし、大話《おおばな》しをし草臥《くたぶ》れ、嘉吉めは胴の間の横木を枕に、踏反返《ふんぞりかえ》って、ぐうぐう高鼾になったげにござります。

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