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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 どれもどれも、碌でなしが、得手に帆じゃ。船は走る、口は辷る、凪はよし、大話《おおばな》しをし草臥《くたぶ》れ、嘉吉めは胴の間の横木を枕に、踏反返《ふんぞりかえ》って、ぐうぐう高鼾になったげにござります。
 路に灘はござりませぬが、樽の香が芬々して、鮹も浮きそうな凪の好さ。せめて船にでも酔いたい、と一人が串戯《じょうだん》に言い出しますと、何と一樽賭けまいか、飲むことは銘々が勝手次第、勝負の上から代銭を払えば可い、面い、遣るべいじゃ。

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