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『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫
「いや、……崖下のあの谷には、魔窟があると言う。……その種々《いろいろ》の意味で。……何しろ十年ばかり前には、暴風雨《あらし》に崖くずれがあって、大分、人が死んだ処だから。」――
と或友だちは私に言った。
炎暑、極熱のための疲労《つかれ》には、みめよき女房の面が赤馬の顔に見えたと言う、むかし武士《さむらい》の話がある。……霜が枝に咲くように、汗――が幻を描いたのかも知れない。が、何故か、私は、……実を言えば、雀の宿にともなわれたような思いがするのである。
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