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 『木の子説法』 青空文庫

(みどり屋、ゆき。――荷は千葉と。――ああ、万翠楼だ。……医師《いしゃ》と遁《に》げた、この別嬪《べっぴん》さんの使ですかい、きみは。……ぼくは店用で行って知ってるよ。……果報ものだね、きみは。……可愛がってくれるだろう。雪白肌の透綾娘《すきあやむすめ》は、ちょっと浮気ものだというぜ。)
 と言やあがった……
 その透綾娘は、手拭の肌襦袢《はだじゅばん》から透通った、肩を落して、裏の三畳、濡縁の柱によっかかったのが、その姿ですから、くくりつけられでもしたように見えて、ぬの一重の膝の上に、小児《こども》の絵入雑誌を拡げた、あの赤い絵の具が、腹から血ではないかと、ぞっとしたほど、さし俯向《うつむ》いて、顔を両手でおさえていました。――やっと小僧が帰った時です。――

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