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 『日本橋』 青空文庫

「はい、ええ、貴女からお心添え、と申されて、途中でまた待伏せでもされるような事があってはならねえ。泊れ、世話をしょう、荷なりと預ってやろうと、こう云うて下さいましたが、何、前後の様子で、私、尺を取りました寸法では、一時|赫として手を上げましたばかり。さして意趣遺恨の有る覚えとてもござりませず、……何また、この上に重ねて乱暴をしますようなれば、一旦はちと遠慮がござりましてわざと控えましたようなものの、いざとなれば、何の貴女、ただ打たれておりますものか。向脛を掻払って、ぎゃっと傾倒らしてくれますわ。」と影弁慶が橋の上。もとより好む天秤棒、真中取って担ぎし有様、他の見る目も覚束ない。
 附け景気の広言さえ、清葉は真面目に憂慮うらしく、
「でも、お年寄が、危いじゃありませんかね、喧嘩はただ当座のものですよ。一晩明かしてお帰りなさると可かったのにねえ。」

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