検索結果詳細


 『日本橋』 青空文庫

「ええ……忰が相場ごとに掛りまして分散、と申すほど初手からさしたる身上でもござりませぬが、幽には、御覚えがあろうも知れませぬ、……元|数寄屋町の中程の、もし、へへへ、煎餅屋の、はい、その時分からの爺でござりますよ。」
「あら、お店の前の袖垣に、朝の咲いた、撫子の綺麗だった、千草煎餅の、知っていますとも――まあ、お見それ申して済まないことねえ。」
 はずんだ声も夜とともに沈んで聞えて静である。

 1351/2195 1352/2195 1353/2195


  [Index]