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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 客僧らが茶を参った、爺《じじい》が汲んで来た、あれは川水。その白濁《しろにごり》がまだしも、と他の者はそれを用いる、がこの少年は、前《さき》に猫の死骸の流れたのを見たために、得飲まずしてこの井戸のを仰ぐ。
 今も言う通りだ。殺さぬまでに現責《うつつぜめ》に苦しめ呪うがゆえ、生命《いのち》を縮めては相成らぬで、毎夜少年の気着《きづ》かぬ間に、振袖に緋の扱帯《しごきおび》した、面が狗の、召使に持たせて、われら秘蔵の濃緑《こみどり》の酒を、瑠璃色の瑪瑙の壺から、回生剤《きつけ》として、そのにしたたらし置くが習じゃ。」

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