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 『木の子説法』 青空文庫

 その透綾娘は、手拭の肌襦袢《はだじゅばん》から透通った、肩を落して、裏の三畳、濡縁の柱によっかかったのが、その姿ですから、くくりつけられでもしたように見えて、ぬの一重の膝の上に、小児《こども》の絵入雑誌を拡げた、あの赤い絵の具が、腹から血ではないかと、ぞっとしたほど、さし俯向《うつむ》いて、顔を両手でおさえていました。――やっと小僧が帰った時です。――
(来たか、荷物は。)
 と二階から、力のない、鼻の詰《つま》った大《おおき》な声。

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