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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

 と指をかけようとする爪尖を、慌しく引込ませるを拍子に、体を引いて、今度は大丈夫に、背中を土手へ寝るばかり、ばたりと腰を懸ける。暖い草が、ちりげもとで赫とほてつて、汗びつしより、まつかな顔をして且つ目をきよろつかせながら、
「構はんです、構はんです、こんな足袋なんぞ。」
 ヤレ又落語の前座が言ひさうなことを、とヒヤリとして、漸と瞳を定めて見ると、美女は刎飛んだ杖を拾つて、しなやかに両手でついて、悠々と立つて居る。

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