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『日本橋』
青空文庫
実はね、お爺さん、宵からお目に掛っていた客が、帰りがけにこの橋から放生会をなすった品があるんです。――昨日はお雛様のお節句だわね――その蛤と栄螺ですって。」
「はい、成程。」
「殿方ばかりでなさるんでは、わざとらしくも聞えますが、その方は御姉さんの御遺言。……まあね、……遺言と云った訳なんですとさ、私も姉が亡くなったんです。
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