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『薬草取』 青空文庫
後《のち》に考えてこそ、翌朝《あくるあさ》なんですが、その節《せつ》は、夜を何処《どこ》で明かしたか分らないほどですから、小児《こども》は晩方《ばんがた》だと思いました。この医王山の頂《いただき》に、真白な月が出ていたから。
しかし残月《ざんげつ》であったんです。何為《なぜ》かというにその日の正午《ひる》頃、ずっと上流の怪《あや》しげな渡《わたし》を、綱に掴《つか》まって、宙へ釣《つる》されるようにして渡った時は、顔が赫《かっ》とする晃々《きらきら》と烈《はげし》い日当《ひあたり》。
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