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 『縁結び』 青空文庫

「お向うというのは、前に土蔵《どぞう》が二戸前《ふたとまえ》。格子戸《こうしど》に並《なら》んでいた大家《たいけ》でね。私の家なんぞとは、すっかり暮向きが違《ちが》う上に、金貸だそうだったよ。何となく近所との隔《へだ》てがあったし、余り人づきあいをしないといった風で。出入も余計なし、なおさら奥行が深くって、裏はどこの国まで続いているんだか、小児心《こどもごころ》には知れないほどだったから、ついぞ遊びに行った事もなければ、時々、門口じゃ、その姉さんというのの親に口を利かれる事があっても、こっちは含羞《はにかん》で遁《に》げ出したように覚えている。

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