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 『薬草取』 青空文庫

 と事もなげに辞退しながら、立停《たちどま》って、女のその雪のような耳許《みみもと》から、下膨《しもぶく》れの頬《ほお》に掛《か》けて、柔《やわらか》に、濃い浅葱《あさぎ》の紐《ひも》を結んだのが、露《つゆ》の朝顔の色を宿《やど》して、加賀笠《かががさ》という、縁《ふち》の深いので眉《まゆ》を隠した、背には花籠《はなかご》、脚《あし》に脚絆《きゃはん》、身軽に扮装《いでた》ったが、艶麗《あでやか》な姿を眺めた。
 かなたは笠の下から見透《みすか》すが如くにして、
「これは失礼なことを申しました。お姿は些《ちっ》ともそうらしくはございませんが、結構な御経《おきょう》をお読みなさいますから、私《わたくし》は、あの、御出家ではございませんでも、御修行者《ごしゅぎょうじゃ》でいらっしゃいましょうと存じまして。」

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