検索結果詳細
『海神別荘』 華・成田屋
侍女一 まあ、貴老(あなた)は。私たちこの玉のような皆の膚は、白い尾花の穂を散らした、山々の秋の錦が水に映ると同じに、こうと思えば、ついそれなりに、思うまま、身の装(よそおい)の出来ます体でおりますものを。貴老はお忘れなさいましたか。
貴老は。・・・貴老だとて違いはしません。緋の法衣(ころも)を召そうと思えば、お思いなさいます、と右左、峯に、一本(ひともと)燃立つような。
僧都 ま、ま、分った。(腰を屈めつつ、圧うるがごとく掌を挙げて制す)何とも相済まぬ儀じゃ。海の住居の難有さに馴(な)れて、蔭日向(かげひなた)、雲の往来(ゆきき)に、潮の色の変ると同様。如意自在(にょいじざい)心のまま、たちどころに身の装(よそおい)の成る事を忘れていました。
13/369
14/369
15/369
[Index]