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 『龍潭譚』 青空文庫

 われはハヤゆうべ見し顔のあかき老夫《おじ》の背《せな》に負はれて、とある山路を行くなりけり。うしろよりは彼のうつくしき人したがひ来ましぬ。
 さてはあつらへたまひし如く家に送りたまふならむと推《おし》はかるのみ、わが胸の中《うち》はすべて見すかすばかり知りたまふやうなれば、わかれの惜しきも、ことのいぶかしきも、取出でていはむは益《やく》なし。教ふべきことならむには、彼方《かなた》より先んじてうちいでこそしたまふべけれ。

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