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 『薬草取』 青空文庫

 山路《やまじ》は一日がかりと覚悟をして、今度来るには麓《ふもと》で一泊したですが、昨日《きのう》丁度《ちょうど》前《ぜん》の時と同一《おなじ》時刻、正午《ひる》頃です。岩も水も真な日当《ひあたり》の中を、あの渡《わたし》を渡って見ると、二十年の昔に変らず、船着《ふなつき》の岩も、船出《ふなで》の松も、確《たしか》に覚えがありました。

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