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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 その唄を聞こう聞こうと、お思いなさいます心から、この頃では身も世も忘れて、まあ、私を懐しがって、迷って恋におなりなすった。
 その唄は稚《おさな》い時、この方の《おっか》さんから、口移しに教わって、私は今も、覚えている。
 こうまで、お憧《こが》れなさるもの、一寸一目お目にかかって、お聞かせ申とうござんすけれど、今顔をお見せ申しますと、お慕いなさいます御心から、前後も忘れて夢見るように、袖に搦んで手に縋り、胸に額を押当てて、母よ、姉よ、とおっしゃいますもの。

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