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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
こうまで、お憧《こが》れなさるもの、一寸一目お目にかかって、お聞かせ申とうござんすけれど、今顔をお見せ申しますと、お慕いなさいます御心から、前後も忘れて夢見るように、袖に搦んで手に縋り、胸に額を押当てて、母よ、姉よ、とおっしゃいますもの。
どうして貴僧《あなた》、摺抜けられよう、突離されよう、振切られましょう、私は引寄せます、抱緊《だきし》めます。
と血を分けぬ、男と女は、天にも地にも許さぬ掟。
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