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『日本橋』 青空文庫
「幸と聞えやしませんよ。……でも笛だけは、もういつも、帯につけていますけれども、箱部屋の隅へ密として置くばかり。七年にも八年にも望まれた事はありません。世間じゃ誰も知らないのに、お爺さん、ひょんな事を言出して、何だか胸があつくなった。笛が動いて胸先へ!……嬰児のように乳に響く! いつでも口を結えられて、袋に入っているんだから。」
と命を抱く羽織の下に、きっと手を掛けた女の心は、錦の綾に、緋総の紐、身を引きしめた朧の顔に、彩ある雲が、颯と通る。
眉を照らして、打仰ぎ、
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