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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 「病の後の保養に来ておいでなさいます、それはそれは美しい、余所《よそ》の婦人《おんな》が、気軽な腰元の勧めるまま、徒然の慰みに、あの宰八を内証で呼んで、(鶴谷の邸の妖怪変化は、皆私が手伝いの人と一所に、憂晴《うさは》らしにしたいたずら遊戯《あそび》、聞けば、怪我人も沢山《たんと》出来、嘉吉とやら気の違ったのもあるそうな、つい心ない、気の毒な、皆の手当を能くするように。)……
 と銀黄金《しろがねこがね》を沢山《たんと》授ける。
 さあ、この事が世に聞えて、ぱっと風説《うわさ》の立ますため、病人は心が引立ち、気の狂ったのも安心して治りますが、免れられぬ因縁で、その令室《おくがた》の夫というが、旅行《たび》さきの海から帰って、その風聞を耳にしますと――これが世にも恐ろしい、嫉妬深い男でござんす。――

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